こんにちは!かっきーです。今回は空港に付帯するクリニックで働く看護師さん【エアポートナース】をご紹介します。また、空港で働くのが夢!だったという方は、狭き道だったフライトアテンダントやグランドスタッフの道を、看護師資格を生かして突破する道もご紹介していますので、最後までお読みいただければ嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
【この記事を読むメリット】
- なぜ多くの新人看護師さんがリアリティショックに陥ってしまうのか、原因がわかる!
- どうすればリアリティショックを乗り越えられるのか、対策が分かる!
- 看護師に憧れを持っていたころの気持ちを思い出し、また笑顔で出勤できるようになる!
- プリセプティや後輩の看護師さんが悩んでいるときに欲しい言葉を掛けてあげられるようになる!
- 記事を読んでもわからないことが有れば個別に質問・相談ができる!
新人看護師の試練【リアリティショック】はどうやって乗り越える?
こんにちは!かっきーです。この記事でははリアリティショックについて、その原因と対策をアドバイスできればと思います。
さて、一人前の看護師を目指す看護師の卵には、2回のリアリティショック(思っていた看護師の世界と現実のギャップに打ちのめされること)が訪れますと言われています。
一つ目は、看護学校や大学で初めて受ける実習時、2回目が病院に勤務して1~6か月後の新人時代です。特に2回目のリアリティショックは就職後3か月時点で65.2%、6か月目時点で46.4%の看護師さんが感じていると報告されています。
今病院に出勤するのがしんどくて仕方ない看護師さん、しんどいのはあなただけではありません。リアリティショックはなぜ起きてしまったのか、そしてどう乗り越えればいいのか、一緒に考えていきましょう。
リアリティショックとは?
私のもとにも、新人看護師さんからの相談が多く寄せられます。その中でもつい先日相談を受けた元生徒(仮にゆいさんとします)の例を紹介します。
入職一週間後のゆいさんは、集団研修で初めて触れる機材や電子カルテに戸惑いながらも、「どの科を希望したらいいと思います?」なんてうきうきした気持ち話してくれていました。
結果、救急対応も学びやすく、どの科に言っても応用が利く呼吸器内科を選んだゆいさん。忙しいのは知ってたけど、早いうちに忙しい職場を経験しておけば将来きっと楽になる!なんて、病院で一番忙しい科を、怖いもの知らずで選んでしまったといいます。
病棟に配属されてからのゆいさんの一日はこんな感じ、本人の感想と合わせてご覧下さい。
9:30 早足のプリセプター(3年目看護師の真紀さん)について歩くだけで必至。
10:00 見学中はひたすらメモ!真紀さんからは「手順を覚えるだけじゃなくて根拠を考えなさい!」と言われるけど、手順を書き留めるだけでいっぱいいっぱいです。
11:00 「〇〇持ってきて!早く!」→どこに有るかわからずパニック。
12:00 「この薬の作用機序は?、、、昨日も使った薬でしょ!」→また真紀さんの怒号。復習したんです、昨日ちゃんと。でも私のアタマでは用法・用量までしか入りませんでした、、ごめんなさい。
13:00 初採血、駆血帯を外す前に針を抜いちゃいそうになり手をパチン!
15:00 減菌手袋でうっかり額の汗を拭って手をパチン!
16:00 電子カルテの入力ミスで事務さんから事情聴取。
18:00 情報共有は伝えるべきことと不要なことが切り分けられず申し送りでつかれるため息。
19:30 勉強会が終わってやっと帰宅準備
20:00 へとへとで帰宅して、書きなぐりで読み返せないメモに思わず涙。
21:00 同期のアキは「私も同じ、先輩凄すぎて鬱になる」って言うけど、もう一人で患者さんを担当してる。私はまだ真紀さんの後をヒヨコみたいに付いていくだけ。
毎日がそんな感じで、一日を終えてその日を振り返っても、上記のようにテンパってる記憶や怒られた記憶しかない、周りは励ましてくれるけど、看護師には向いてないんだと思う。ううん、看護師に向いてないのは初めての実習で血を見て倒れた時からわかってた。あの時看護の道を諦めていた方が良かったのかな。毎日新しく覚えなきゃいけないことが出てきて、勉強しても全然追いつかない。一生かかっても先輩たちみたいな知識や経験が身につく気がしない。
集団研修時の笑顔が一転してそんな悲しい顔を見なくてはいけなかったのは、入職して3か月の頃でした。
リアリティショックの原因~専門家による分析~
一般職のビジネスパーソンも、フライトアテンダントもパティシエも、どんな仕事でも新人時代は辛いことが多いもの。ですが、看護師さんが経験する不安やショックは、他業務とはまた異なるものだと言われます。
例えば2005年に行われた研究では、リアリティショックの原因について以下のように記されています。
リアリティ・ショックには7つの型があることがわかった。それらは
新人看護師のリアリティ・ショックの実態と類型化の試み─看護学生から看護師への移行プロセスにおける二時点調査から─勝原裕美子 ウィリアムソン彰子 尾形真実哉日看管会誌 Vol 9, No 1, 2005
「医療専門職のイメージと実際とのギャップ」
「看護・医療への期待と現実の看護・医療とのギャップ」
「組織に所属することへの漠然とした考えと現実の所属感とのギャップ」
「大学教育での学びと臨床実践で求められている実践方法とのギャップ」
「予想される臨床指導と現実の指導とのギャップ」
「覚悟している仕事とそれ以上にきびしい仕事とのギャップ」
「自己イメージと現実の自分とのギャップ」
であった
全部で7つの原因が挙げられています。具体的に見ていきましょう。
1 医療専門職のイメージと実際とのギャップ
1つ目は、仕事の忙しさや自信の無力さへの反応ではなく、一緒に働く同僚の看護師さんへの不満や違和感によるリアリティショックです。
病棟は医療の専門家として高いプロ意識をもって仕事をしている人たちの集まり。看護学校時代もそう教わってきましたし、実習で見た看護師さんたちの姿を「私もあんな風にできるのかな」なんて不安と、それを超える尊敬の念をもって見て来たことでしょう。
だからこそ、「めんどくさい」「あの患者さんうざい」みたいな会話が繰り広げられる現実、白衣の天使のはずが感情に任せて新人の自分に怒りをぶつけてくる姿を見て、私が目指していた看護師はこんなものだったのか、、と感じてしまうのです。
ゆいさんも、真紀さんの技術や的確な指導に圧倒されつつも、昼休みに語られたマシンガン陰口トークに、もやもやを感じてしまっていました。
2 看護・医療への期待と現実の看護・医療とのギャップ
2つ目は、看護師さんへのギャップではなく、「看護」自体へのギャップからくるリアリティショックです。看護師は患者さんにとって一番身近な医療者です。
だからこそ、患者さん一人一人の想いを知り、想いに合わせた看護を提供できる、それが看護師の役割だと信じて看護師を志した人が、私の周りにも多くいます。
しかし、実際には検査や処置に追われゆっくり話をする時間がありません。患者さんに寄り添うという言葉に白々しさを感じてしまう。
経験を積んで様々なことを首尾よくこなせるようになったら、患者さんとお話をする時間も出来るかなと思っていたけど、先輩たちもそんな時間持てている人見たことない。やることが多すぎて、とても描いていた看護師の姿を体現できそうにない。
看護って何だろう、、。私が新人だから出来てないだけじゃなく、これが現場での「看護」の現実なのかな。そんな思いが、ショックとして現れるのです。
3 組織に所属することへの漠然とした考えと現実の所属感とのギャップ
今までは、学校や部活、サークルやアルバイトなど、組織に属すると言っても基本的には自主的に選んだ道でした。高校や大学に行かないことも、部活やバイトをしないことも自由です。
しかし、社会人になるとそうとは限りません。働かないと、生きていけない。一年目の看護師さんに独立するという選択肢は浮かばないでしょうし、このままずっと病院その他組織の中で生きていかなくてはいけない。
そんな息苦しさのようなものを感じてしまう。それがリアリティショックの3つ目の原因です。
また、
「奨学金の関係で4年間はこの病院に務めなくちゃいけないけど、他に就職した同期と比べてお給料も低いし研修も充実してない。四年間の間に同期と差が付いていそう」
「子供が好きでNICUを希望したけど、新人でたくさん勉強できるうちに成人や救急を診れる病棟に行かなかったことをすぐに後悔した。人は優しくて働きやすいけど、将来の選択肢が日々狭まっている気がする」
など選んだ組織によって少なからず選択肢は狭まるもの。看護師という専門性の高さゆえに、前進しているのか将来の選択肢を狭めているのか不安になるというのも原因の一つです。
4 大学教育での学びと臨床実践で求められている実践方法とのギャップ
4つ目の原因は、今まで学んできた理想的・模範的な知識技術と現場で求められる実践的な知識技術のギャップです。
2で見たような看護事態へのギャップに加え、そんなこと習ってなかった!大学のときに教えて欲しかった、という教育現場への不満の声おも上がっています。これは学生時代に必死になって学びを続け、わたしは看護師になる資格がある!と自信を持っていた新人看護師さんに特に多い原因です。
「実習では一人の患者さんの事だけ考えればよかったけど、今は5人、夜勤だと10人以上担当することも。誰に何をすればいいか整理できなません。先輩は普通にこなしてるけど、私の頭じゃいつか重大なミスをしてしまいそうで怖いです」
という声も。特に現在のコロナ禍で、実習経験を多く積めなかった新人さんたちはこの原因によるリアリティショックがとても多いです。プリセプターになる人は、その点を考慮して指導してあげてください。
5 予想される臨床指導と現実の指導とのギャップ
指導者に対する不満や不安も、リアリティショックを引き起こしています。
「わからないことやできないことがまだまだ多いのに、独り立ちを求められる」
『初めてやることで、まだ口で教わっただけなのに、「さっき教えたでしょ!なんでできないの!」と叱られて、萎えた』
などです。今は大学も看護学校も優しい先生が多いので、現場での指導にますますギャップを感じるようです。
学生時代に指導を受けた大人は教師や教授など、教育について学んできた人たち。病院では教育の仕方について学ばずに自己流で指導する先輩や上司が多いので、彼女たちもうまく教えられず悩んでいるかも。
6 覚悟している仕事とそれ以上にきびしい仕事とのギャップ
命と向き合う覚悟を決めて、腹をくくった学生時代。その覚悟をさらに上回ってくる現実の厳しさが、リアリティショックの6つ目の原因になっています。
特に、厳しい現実に「一人で」向き合うことへの不安が新人看護師さんをナーバスにしています。看護学生時代、実習でミスをしても必ず教員や実習指導者がついてカバーしてくれたり、事故を未然に防いでくれました。
ですが、新人時代は先輩が付いているとはいえ、これから今先輩がやってくれていることも全部一人で対応しなくてはいけない。プレッシャーやストレスで体調を崩す新人看護師さんも多いようです。
半年も経ちほんの少し慣れたかなと思ったら、今後は夜勤が入るようになります。新人ナースが仕事の厳しさから逃れるのは難しいのです。
7 自己イメージと現実の自分とのギャップ
最後は、自分が思っている自分の姿と、現実のあなた、周囲から見えるあなたとのギャップを原因とするリアリティショックです。
「笑顔で接しているつもりでも顔が強張っていると言われたり、患者さんに怖い看護師と思われてしまいます」
「午前中は完璧に動けたと思ってたのに、昼休みプリセプターに今日は調子良くなかった?と言われてショックでした」
など、描いている姿と周囲から見える自分、現実の自分との違いに愕然としてしまうことも。
理想の看護師像を描くことは、自分の成長のためにとても大事です。しかし、達成のためのステップは細かく、焦らずに。現実的なスケジュールで地に足付けた計画を立てないと、理想とのギャップに現実逃避してしまいます。
一つの悩みで何もかも嫌に、、。
以上が、新人看護師さんのリアリティショックを生むと考えられている主な原因です。
上記以外にも、患者や御家族との複雑な関係への対応や患者の死亡へのショック、学生時代とは異なる様々な世代との人間関係の構築なども考えられます。
一度リアリティショックが起きてしまうと、それ以外の様々な悩みも複雑に絡み合い、全てが上手くいっていないように感じてしまいます。
そして「私には何もできない」「看護師解いて働く資格がない」「何ひとつ成長していない」そんな気持ちになってしまうのです。
リアリティショックへの向き合い方~本当に、何もできていませんか?~
何事も、成し遂げるまではいつも不可能に見える
ネルソン・マンデラ
ですが、ゆっくり深呼吸して、考えてみて下さい
あなたは本当に、何もできていませんか?
何もできていない看護師さんを、私は見たことが有りません。
看護大や看護学校も、命を任せられると信頼した人しか卒業させません。
そしてあなたもきっと、心の奥ではそうとわかっているはずです。
でも苦しい。きっとあなたは「何もできない」のがつらいのではなく、自分が「何かできるようになれるのか不安」なのではないでしょうか。
あなただけじゃありません。自分のせいで、いつか誰かを死なせてしまうかもしれない。それはきっと全ての医療者が、退職する日までずっと持ち続ける感情なのでしょう。もっと患者さんに出来ることがあったかもしれない。どんなベテランになっても、不甲斐なさや無力感を感じている日は有ると思います。
しかし、大切なのはその感情を明日への力に変えることです。
何事も、成し遂げるまではいつも不可能に見えるー
人種差別と闘い、絶対不可能と言われたアパルトヘイトの撤廃に尽力したネルソン・マンデラ氏の言葉です。
新人看護師として医療の現場に立ったあなたにとって、テキパキと指示する先輩の姿も、患者さんに納得いく看護を提供できる自分の姿も、とっても遠くに感じると思います。
しかし、日々「今の自分に出来るだけのことをやれた」と思える一日を送っているうちに、気付いたらたどり着いているものです。そのときは、きっと日々感じる不安も、腕を磨くための原動力に変わっているはずです。
そう思えるための4つのステップをまとめました。今じゃなくても構いません。気が向いたときに、少し良いことが有ったときに、読んでみて下さい。
リアリティ・ショックに負けないこころのレシピ1 自己肯定
【何もできなていない】と悩んでしまうあなたは、きっと自分も力になりたいと考える、優しく責任感が強い素敵な人。きっと、何もできないのではなく「自分のしたことなんて、先輩がしてることと比べたら何もできていないのと同じ」と感じてしまうのでしょう。
リアリティ・ショックの対処法6つのステップ
「分かる(理解する)」とは「分ける」こと。自分の状況を理解するには、まず切り分けることです。冷静になって以下のように切り分けをしてみて下さい
1「私は新人ナース、看護師キャリアは始まったばかり。出来ないのが当たりまえ」と、となえる!
そう心の中でとなえ、リラックスしましょう。
2「出来ていること」と「出来ていないこと」を切り分け、「出来ていないこと」を書きだす
出来ないことが多すぎて、一生かかってもできる気がしないと思うかもしれませんが、心配ご無用。脳(大脳皮質神経細胞・A10 神経群・前頭前野など)は、新しく学んだことを単発知識としてではなく、回路として記憶し、ネットワークを作ろうとします。そしてそのネットワークは、新しい知識が増えるほど強固で伝達速度も速い良質な回路になっていくのです。
ゆいさんも学校で看護学を学んだとはいえ、実践レベルの消化器内科の知識はその多くが所見の知識、ネットワークが出来ていない状態です。それが、学ぶごとにどんどん回路が増え、知識と知識がネットワークで繋がり、学習効果はどんどん高くなっていきます。
知識だけでなく電カル、検査機器など機械の使い方や記録のつけ方、先輩との接し方など、その病院独自の規則や慣習、しきたりなんてものも、知れば知るほど理解の速度は早まります。知識や経験は足し算ではなく掛け算で増えていくのです。
ですから、ゆいさんは一生かかっても覚えられないと言っていますが、ネットワークが出来てくれば自分でもびっくりするくらい学習スピードは速くなるものなのです。
3 それが、今のあなたが本当に出来てないといけないことなのか考える
今出来ていないといけないこと、は、基本的に「すでに教わったこと・メモに残していること・以前注意されたこと」の3つです。実務上初めて経験することや初めて必要になった知識は、実践できなくても落ち込まなくて大丈夫です!先輩に「このくらい自発的に勉強して、出来るようになっているべき!」と言われていたとしても、同様です。
切り分けが難しいときは、新人時代の記憶が強く残っている2、3年目の先輩に、2のリストを見せて、先輩が一年目のころに出来ていたかどうか、聞いてみてもいいでしょう。
4「出来ていること」にスポットを当て、レベルアップ表に記録する
人にとって何よりの喜びは自身の成長を実感する時だと言います。実際に、やりたいことを全部やりつくした大金持ちが、年を取って最後に夢中になることは、勉強が多いそうです。
ですから、あなたもロールプレイングゲームの主人公になりきって、看護師としての自分をレベルアップさせていきましょう。
大切なのは2点。1つ目は、具体的な行動をレベルアップの要因にすること。「上手く」できたかどうかや先輩の合格をもらえたかなどの評価は加えないことです。評価のような主観的要素を入れてしまうと、まじめで自分に厳しい看護師さんはレベルアップしていいのか迷ってしまい、ずっと同じレベルに留まってしまったりします。成長してるのに!
ですから、具体的な行動ベースで客観的な基準でレベルアップ要因を作るのです。例えば、採血を100回したらレベルアップという風に。「上手くできたか」という主観要素や「人からどう見えてるか」という他人要素は排除してくださいね。
2点目は、その成長を、目に見える形にすることです。でっかい棒グラフを作り、レベルが上がるごとに塗っていくなど、目に見える形で成長を表現するのです(それがレベルアップ表です)
看護師さんの業務は単純な業務は少なく、同じ行為でも患者さんが変わればやり方も難易度も変わってきます。複雑な要素が絡んでくるため、成長を実感しにくいもの。ですから、レベルアップ表で成長を実感できる状況を自ら作ることが大切なのです。
5「出来ているべきこと」に絞って、復習する
そういえば、ゆいさんは「一度教わったことをまた聞くと、真紀さんに怒られます」と言っていました。確かに、単に「〇〇がわかりません」とだけ伝えると、何も努力してないように感じてしまう先輩もいると思います。自身も一年目に、つらい中歯を食いしばって頑張った記憶が有るからなおさらです。
ですが、上記のようなステップを踏んで自己分析しながら復習していることをしっかり伝えてみて下さい。あぁ、この子はこの子なりに、何とかしようともがいているんだなと、前向きな姿勢が伝わりグッと印象が良くなります。また、あなたがこのように自己分析をしっかりしていると、先輩や同僚も、「あ、△△はもう出来るのね。じゃあ次は、、」と、より的確なアドバイスを受けられるでしょう。
6 課題を潰したら、新しいことにチャレンジする
ここまでのステップを踏んだゆいさんは、もう新人看護師さんが達成していなくてはいけないレベル(Must)は達成していました。Mustの課題も当然日を追うごとに増えていきますから、立ち止まることは出来ません。ですが、日々上記のステップを踏む習慣を身につけ、少し心に余裕も出て来たようです。真紀さんはまだ厳しいことを言ってくるようですが、Mustレベルを超えた高い要求(Should)へのアドバイスは、全部聞き入れるとあなたにとって逆効果になることも有ります。
リアリティショックに負けないこころの作り方2 自己基準
自分のしたことに人が評価を下す、それは自由ですけれども、それによって、自分が惑わされたくないのです。
イチロー
今自分がやっていることが好きであるかどうか。それさえあれば自分を磨こうとするし、常に前に進もうとする自分がいるはず。
Should(すべきこと)は自分で決める!
Mustは職場のルールや一般的な社会通念が基準を作ります。しかし、次のステップ、つまりやるべきことを行った上で更に高みを目指すステップ(Should)は、自分基準で持つことを心掛けてください。
スポーツの世界を見ても、出来る人は常に自分を基準にしています。「ライバルは自分自身」なんて、スポーツ漫画のセリフでもよく聞きますよね。
なぜ評価基準を自分の中に置くべきなのか。それは「あなたが歩む看護師のキャリアは、あなたのもの」だからです。先輩は看護技術や知識を教えることは出来ても、あなたがどういう看護師を目指すべきかまでは、教えることは出来ないのです。重要なのはあなた自身の価値観です。
ゆいさんも、消化器内科のスペシャリストのキャリアを歩むのか、様々な科を回りジェネラリスト看護師を目指すのか、はたまた病院の外から看護師を支えるマネジメント会社を設立するのか。どういうビジョンを描くかによって、学ぶべきことの優先順位は変わるはずです。
真紀さんのアドバイスは、真紀さんがどういう看護観を持っているかで変わってくるでしょう。しかし、Shouldレベルは個人の価値観や理念が大きくかかわってきますから、たとえ先輩であっても、自身に合わないアドバイスを受けることはマイナスに働きかねません。後々になって、看護師としてのやりがいを失ったり「こんなはずじゃなかった」とキャリアを後悔する原因になりえるのです。
何かを長期間、成し遂げるためには考えや行動を一貫させる必要がある。
イチロー
ですから、自身の看護師キャリアを充実させるためには、行動を一貫させること、そしてそのためには、Shouldレベルのアドバイスは、聞き流すことも必要なのです。
自分の道を決めるのは自分
アスリートの話をもう一つ紹介します。サッカー元日本代表の本田圭佑選手です。【W杯で有名になってセリアA(イタリアのプロサッカーリーグ)に入って10番(エース番号)を付ける!】これはなんと彼が小学校の卒業文集に書いた宣言です。そして彼は15年の歳月をかけて、それを実現しています。
彼にとって、目標が決まって、その為に何をするべきかわかったら、それはもう達成したのと同じ意味を成すのだそうです。凄い考え方ですよね。だって通常は、何をやるべきかわかっても、その為に努力し続けることが最も難しいのですから。周囲もそのように考え、批判的な言葉を投げつける人も居たようです。しかし、彼にとって、自分でやると決めたことを日々取り組み続けるのは、ごくごく当たり前のことでした。自分の中に確固たる判断基準が有るから、周囲の批判にも「自分の道を決めるのは自分」と意に介さず、信じた道を突き進むことが出来たのですね。
「Mustは他者基準、Shouldは自己基準」目標達成の合言葉です。
リアリティ・ショックに負けないこころのレシピ3自己イメージ
ゆいさんに上記アドバイスをしたとき、最初に出てきたのは「でもわたし、どんな看護師になりたいか、自分でもわからないんです」という言葉でした。
セルフイメージの大切さ
確かに、新人のうちに自身の看護観やどんな看護師になりたいかを見つけたり、看護師キャリアの全体を見通した目標を立て、その為に何が必要かを考えることは難しいでしょう。特に、落ち込んでいるときはあまりに長期的なビジョンを描くと実現までの途方もない過程にまたモチベーションを保つのが難しいでしょう。
ですから、自分を知り自己イメージを描き、比較的短期間(3~6か月)で達成できる目標を設定にするのが良いと思います。必要なことは、まずは自分を知り自己イメージを描くことです。
自分を知るためのツール
自分を知るためには「エゴグラム」「エニアグラム」「ジョハリの窓」「FFS理論」など多くの理論が確立されています(詳しくはこちらの記事をご参考下さい)
これらのツールは客観的な自己分析ができますが、大切なのは、むしろその結果と主観的な自己認識との間に出たズレ、相違です。そのズレにこそ「理想のあなた」が隠れている可能性が有るからです。
例えば、ゆいさんも自分では
【一匹狼タイプで、自分の判断に自信を持ち、故に単独で事を進めてしまいがち】
と分析していたのに、分析ツールでは
【協調性・妥協性が高く、遠慮がち。自分に自信を持ち行動ことも大切】
と真逆とも言える診断されていました。この場合、おそらく彼女の主観的自己分析には「もっと自己主張をしたい」というゆいさんの欲求、こうありたいと願う理想の自分像が、現れていたのでしょう。実際に、ゆいさんは傍から見るととても引っ込み思案で、自身の意見をその場では言えない子なのですが、最終的な判断は人の意見より自分の信念を優先する子でした。
ゆいさんの例のように、主観的な自己分析と、客観的な分析ツールの相違に注目することで、こうありたいと願う理想の自分を垣間見ることができるかもしれません。
何もできなくてつらいと悩んでいること自体が、看護師の資質の証明!
ちなみにですが、経験上、【何もできなくてつらい】のような悩みを抱く看護師さんは、責任感が強く、自分の事より周囲の事を優先して考えて行動できる人がとっても多いです。
ですので、今悩んでいるということ自体が、あなたは看護師に向いている人だと証明しているのです。
リアリティ・ショックに負けないこころのレシピ4自己評価
人生の失敗者の多くは、自分が成功にどれだけ近づいているか気がつかずにあきらめた人たちだ。
トーマス・エジソン
スマホは、アップデートしてる間はずっと止まっているように見えます。ですが、中では一所懸命レベルアップしようと頑張っています。そしてひとたび完了すると、、地図アプリが正確になった、ゲームのバグが直ったなど目に見える成果が表れます。
人間も同じです、人目に分かるような変化が出るまでには、時間がかかります。特に看護のスキルは全体で評価されるので、一つ一つの技術が向上しても看護師としてのスキルアップと評価されにくいのです。点と点が繋がって線になる前に挫折してしまう看護師さんが多いのです。
そしてエジソンの言葉にあるように、成長を感じ取れないと、人は歩みを止めてしまいます。せめてあなた自身は、あなた自身の成長を目に見える形で記録し、日々実感してあげてください。
やり方は簡単です。昨日の自分をライバルにして、昨日より出来たこと、初めて取り組んだことを記録するレベルアップ表を作るのです。誰と比べるのでもありません。ライバルは昨日のあなたです。昨日のあなたは今日のあなたに最も近い存在だからです。これほどうってつけのライバルが他にいるでしょうか。
そして、RPGゲームのようにライバルを倒して、レベルアップをはかりましょう。ゲームでも、プレイヤーのレベルが上がる瞬間は気持ちいいもの。昨日できなかったことが出来る、新しい事に取り組む、課題を見つける。全てがレベルアップ、棒グラフを作り、レベルが上がるごとに塗っていってください。
コツは、具体的な行動や数字で評価することです。例えば採血が上手く「なる」をレベルアップ項目にすると、いや今日はたまたま刺しやすい人だったから、明日もできるかわからない、、などとレベルアップしていいか戸惑ってしまいます。
そうではなく、採血を上手く「した」という行為自体をレベルアップ基準にするのです。そうして、目標を達成するプロセスを可視化し、自分自身で見守り、応援してあげてください。
まとめ~すべての新人看護師さんには、看護師の素質がある!~
冒頭の言葉を繰り返します。私は今まで、何もできない看護師さんを見たことが有りません。看護大も看護学校も、この子なら患者さんの命を預けても大丈夫、壁にぶつかっても、必ず乗り越えられる、そう思った生徒しか、卒業させません。
何もできない、、そう悩むあなたはきっと心が優しい。何もできていないのに出来ていると思う人より、私はずっと好きですよ、そういう人が(^^♪
心が優しいあなたは、あらゆることが他人基準になっています。出来るできないも、今自分が何をすべきかも、今自分は頑張っているかどうかも、自分を認めていいのかも、理想の看護師とはどんな看護師なのかも。
自分を軸に思考・発言・行動できるようになる、難しいかもしれませんが、4つのステップを一つ一つ実行してくれれば必ずあなたは「(看護師として)何かができる自分」に気づくはずです。
あなたの看護師キャリアが明るくなることを願っています!
幸福は毎月やって来る。
アンドリュー・カーネギー
だがこれを迎える準備ができていなければ、 ほとんど見過ごしてしまう。
今月こそ幸福を見逃すな。
【参考文献】
新卒看護師の職場適応に関する研究ーリアリティショックと回復に影響する要因ー日本看護研究学会雑誌,2004
新人看護師のリアリティ・ショックの実態と類型化の試み─看護学生から看護師への移行プロセスにおける二時点調査から─勝原裕美子 ウィリアムソン彰子 尾形真実哉日看管会誌 Vol 9, No 1, 2005